昔ながらの木造二階建て家屋、初めての印象は、「懐かしい」でした。潮気に負けない木の家は独特の色を携えていて落ち着きがあります。玄関は引き違いの引き戸になっていて、商いの面影が残っています。通りには生活の気配があるので、敷居を境に時代を遡る感じがします。旧大久保本店が商いを閉じたのが約50年前なので、2008年現在から数えると西暦1958年頃、昭和33年になります。調べてみると、ノーベル賞作家大江健三郎が「飼育」で芥川賞を受賞した年です。大江健三郎23歳の時でした。戦後復興の象徴、東京タワーが完成した年でもあります。言わば映画「三丁目の夕陽」の舞台がそのまま保管されていたことになります。実際は大正9年、西暦1920年以前に建築されているので、昭和生まれの私には届かない歴史を持っていることになります。
大久保本店の軒先。昔ながらの生活圏にあるので温かみがあります。都心部にも旧家を模した店舗はありますが、微妙に違和感を感じてしまうのは周囲との温度差があるからなのでしょう。好みはあると思いますが、大久保本店の良さは、この場にあるという理由も大きいように思います。
個人的に、この角度はかなり好みです。勝本漁港から路地に入り、始めに見える大久保本店の一角です。現在二階はスタッフルームになっていますが、かなり贅沢な空間になっています。
木の風合いは年月に比例するのでしょう。長崎県のまちづくり景観資産に登録されているので、外観の変更は出来ないそうですが、その理由が分かります。
素人ながらにも、日本の木造建築技術は匠なのだと思います。当初築約100年程、という話を聞いていたので、朽ちたイメージを持っていたのですが、実際は深みのある木造の家屋でした。以前、例えば京都智恩寺の宝塔を見たとき、築500年という話を聞いて確かに凄いとは思ったのですが、国の重要文化財なので管理の質も違うのだろうと感じていました。ところが、大久保本店を見ていると、日本の大工の木造に対する知恵と技術が大きな理由なのだと気付きます。


